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横顔・・・無意識の自分が現れる場所

小さい頃から絵を描くことが好きだった私は
女の子やお人形さんの絵ばかり描いていた。
お目目が大きく、派手にカールしてあるまつ毛。
スカートはいつもフルーツ柄を好んで描いた。

小学校高学年になると
もっと上手に絵を描きたいと思うようになり
家にある小物をリアルに描くようになった。

誰かに教わったわけではないので
ただただ、目の前にあるものを自分が見た通りに
夢中になって描いていた。

ある時、私は母の横顔を描いた。

確か横座りの全体の姿も描いたと思う。
自分でもびっくりするくらいリアルに上手に描けていて
自画自賛したくなるほどの出来栄えだった。

これを見せたらあまりの上手さにびっくりするだろうな
と、ワクワクしながら母に見せたのだけど

「・・・・・・」

何らか反応はあったはずだけど
母が何を言ったのか何も覚えていない。

多分ほめてくれたと思うのだけど
自分が思ってるようには褒めてもらえなかった
ような気がする。

思ったほどの反応をもらえずガッカリしながら
もう一度自分の描いた絵を見てみた。

私が描いた母の顔は
口元がへの字に結ばれて
苦虫を嚙みつぶしたような表情だった。


人は自分のことを正面からしか見ることができないという。

それは自分の意識が働いている範囲しか
見れないということ。

しかし、他の人は正面以外の横、斜め、後ろから見ている。

人の無意識の部分が現れる場所である。

普段私たちは
自分では見ることができない無意識の領域を
他人に見せていることになる。

私が描いた母の横顔は
母にとっては自分の思っていた姿ではなかったのかもしれない。

でもそばにいた私にとってはその顔こそ
普段の母そのものだった。


この横顔の絵を思い出すたびに何とも寂しい気持ちになる。

それは描いた絵を喜んでもらえなかったのもあるけれど
私の記憶の中の母はいつもにがい表情だったこと
笑顔の記憶が少ないことが
さらに寂しい気持ちにさせるのだった。


私は今、どんな横顔を夫や子どもに見せているのだろう。

きっと現在の私もあの時の母と同じように
にがい表情をしている気がする。

頭の中で不安ばかり作り出して
目の前にいる子どもたちの存在を見ようとしない自分の横顔が
ぼんやりと目に浮かんだ。

横顔・・・無意識の自分が現れる場所_c0366058_01134226.jpg


by yukai_dp | 2017-10-19 01:25 | | Comments(0)

岐阜県大垣市在住のイラストレーター、グラフィックデザイナー。見過ごされてしまう素敵なものを見つけたい。


by yukai